頭痛について
頭痛は、多くの患者さまに発症し、生活や仕事に支障をきたします。頭痛による経済的損失は毎年2880億円にのぼるとも報告されています。これら頭痛疾患は、脳の神経の生物学的な異常が明らかにされ、ここ数年で治療方法や予防治療に劇的な進歩がありました。早めの治療で痛みを軽くでき、頭痛発作の回数を軽減できることも多いので、まずは気軽にご相談ください。
頭痛の種類
頭痛には幾つかの種類がありますが、大きく分けて、頭痛自体が疾患である一次性頭痛と、他の病気の症状の結果生じている二次性頭痛があります。前者の一次性頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがあります。一方、後者の二次性頭痛を引き起こす原因疾患としては、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎などがあり、一刻を争うケースも少なくありません。そのため二次性頭痛を常に念頭にいれ診察にあたります。
頭痛の診断
頭痛でお悩みの方が医療機関を受診した際には、まず詳細な問診を行い、必要に応じてMRI などによる画像検査を実施します。国際頭痛分類には300種類以上の頭痛疾患が記載されています。これらの診察の結果から、頭痛のタイプを判断し、それから治療を行います。
一次性頭痛について
片頭痛
片頭痛は、こめかみから目の辺りが、ズキンズキンと心臓の動きに合わせるようなリズムで痛むタイプの頭痛が典型的ですが、典型的でない両側の非拍動性の片頭痛などもしばしば認めます。原因は、三叉神経節を中心とした神経原性炎症や血管の拡張が関与する説など様々な説があります。頭痛の程度は中等度から重度で、日常生活に大きく支障があり、動作による頭痛の悪化、悪心・嘔吐と音過敏・光過敏など外的刺激に対する過敏性を認めます。痛みが比較的に早く治まることもありますが、3日間ほど続くことも少なくなく、QOL(生活の質)が低下します。片頭痛は人口の約8.4%と言われており、予防も含め最も治療すべき頭痛の一つです。
片頭痛の治療は、脳血管の拡張を防ぐトリプタン系の薬剤を中心に急性期治療を行います。
トリプタン系の薬剤は以下のものがあります。
- ソマトリプタン(Ⓡイミグラン)錠剤・点鼻薬
- ゾルミトリプタン(Ⓡゾーミッグ)錠剤(口腔内崩壊錠あり)
- エレトリプタン(Ⓡレルパックス)錠剤
- リザトリプタン(Ⓡマクサルト)錠剤(口腔内崩壊錠あり)
- ナラトリプタン(Ⓡアマージ)錠剤
これらの薬剤は、頭痛発作時に使用する薬剤ですが、以下のような注意事項があります。
*トリプタン系薬剤の注意事項
- 狭心症または心筋梗塞など虚血性心疾患の既往や徴候のある方
- コントロールできていない高血圧のある方
- 脳血管障害(脳梗塞・一過性脳虚血発作)の既往や徴候のある方
- 閉塞性動脈硬化症等の慢性動脈閉塞症や末梢血管障害のある方
- 重度の肝機能障害や腎機能障害、血液透析中の方
- パーキンソン病の薬剤使用中あるいは投与中止2週間以内の方
- 他の片頭痛治療薬(エルゴタミン製剤等)使用中の方
- 脳幹性前兆を伴う片頭痛や片麻痺性片頭痛の患者
これらの注意事項のためトリプタン系薬剤を使用できないこともあります。
また、頭痛の頻度が多い方(2回以上/月もしくは6日以上/月)やトリプタン系薬剤の効果が無い方などは、片頭痛の予防薬の使用を検討します。
片頭痛の予防薬は以下のものがあります。
- アミトリプチリン塩酸塩(Ⓡトリプタノール)錠剤
- β遮断薬のプロプラノロール(Ⓡインデラル)錠剤
- バルプロ酸(Ⓡセレニカ・Ⓡデパケン)錠剤
- カルシウム拮抗薬のロメジリン(Ⓡミグシス・Ⓡテラナス)錠剤
- ガルカネズマブ注射液(Ⓡエムガルティ)皮下注射(新規治療です。)
*ガルカネズマブ注射液(Ⓡエムガルティ)皮下注射
エムガルティはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という血管拡張に関わる因子の中和抗体で、片頭痛の従来の予防薬の「回数減少」だけでなく、「発作時の痛み軽減」を両方期待できる薬剤です。注射薬のため、月1回の通院が必要ですが、毎日内服する薬と違い、1か月に1回の注射で済むところも利点です。
*臨床試験成績
- 6カ月間の使用で片頭痛の日数が減った人の割合は50%減:59%、75%減:33%、100%減:11%。
- 片頭痛発作がゼロになった例が10%を超えている。
- 平均で月の片頭痛の日数が8.6日から3.6日分減った。
- 片頭痛の日常生活の支障度(MIDASスコア)も改善。
- 使用開始翌月には効果が出ている。
*ガルカネズマブ最適使用推進ガイドライン(厚生労働省)を遵守するため、以下は必須です。
- 医師に片頭痛と診断されていること。
- 片頭痛が過去3か月の間で、平均して1か月に4日以上。
- 従来の片頭痛予防薬の効果が不十分、または内服の継続が困難な場合。
- 妊娠中・授乳中は、十分検討した上での「慎重投与」可。
- 18歳未満の小児は「使用不可」。
*費用について
- 保険適応です。3割負担の場合、1本あたり13,550円(元の薬価は45,165円)。
- 初月は2本使用します。
- その他、通常の再診料、注射処置料などがかかります。
*当院での実際の注射
- 手、足、腹部のいずれかに注射します。
- 外来で医師または看護師が、「オートインジェクター」を使って皮下注射を行います。
- 当日診察前の準備は不要です。肌を出しやすい服装でご来院下さい。
- 3か月で効果がなければ中止を考慮します。
*フレネズマブ注射液(Ⓡアジョビ)皮下注射
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は片頭痛の原因となる物質で、CGRPを抑制する薬理機序としてはエムガルティに次ぐ、片頭痛の予防薬になります。ライフスタイルにあわせて2つの投与方法(4週間に1回、12週間に1回)が選択できる片頭痛の発作抑制薬です。
*臨床試験成績
- 反復性片頭痛患者において、50%以上減少した割合はアジョビ4週投与で1ヶ月目43%⇒2ヶ月目47.1%⇒3ヶ月目45.4%。アジョビ12週投与で1ヶ月目53.8%⇒2ヶ月目46.1%⇒3ヶ月目44.2%。
- 平均で月の片頭痛の日数が8.8日から4週投与で4.00日分減り、12週投与で4.02日分減った。
- 片頭痛予防薬を併用しているグループにおいても有効性を示した。
- 片頭痛予防薬効果不十分グループにおいても有効性を示した。
- 使用開始翌月には効果が出ている。
*エレヌマブ注射液(Ⓡアイモビーク)皮下注射
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、片頭痛の原因となる物質で、アイモビークはCGRPの受容体に蓋をすることで、片頭痛の発作を抑える薬です。エムガルティ、アジョビと効果発現の機序が異なり、アイモビークは抗CGRP受容体モノクロナール抗体となります。アイモビーグ皮下注 70mg ペンは、2018年に世界で最初に発売されたCGRP 製剤で、長期的な臨床成績をもっています。
*臨床試験成績
- 反復性片頭痛患者において、50%以上減少した割合は46.5%。
- 64週投与後の50%以上減少した割合は64.8%。
- 5年目経過後も中和抗体発現は0.8%。
- 長期投与試験により安全性の確認。(主な副作用は、注射部位のかゆみと発赤、便秘)
- 片頭痛の日常生活の支障度(MIDASスコア)も改善。
- 使用開始翌月には効果が出ている。
*新しい片頭痛頭痛薬 レイボー発売のお知らせ
レイボーは今までの薬とは違う、新しいタイプの急性期治療薬で、片頭痛発作に対する効果が期待されています。
レイボーは、様々な種類の頭痛の中でも片頭痛だけに効く、片頭痛専用のお薬です。
片頭痛発作時のみに使用し、予防的には使用しないようにしてください。
このお薬の通常用量は1回あたり100mgです。
ただし、お薬の効果やあなたの状態によって用量を調節できます。
このお薬を服用したあとにいったん痛みがなくなり、もし再び片頭痛による痛みが戻ってきた場合、再度このお薬を服用する事ができます。 その場合は、24時間で合計200mgを超えないようにしてください。
頭痛改善の割合は80%程度認めます。
24時間後も頭痛再発なく効果の持続が期待できます。
*アクイプタ(Ⓡアトゲパント)錠
アクイプタは、片頭痛の発症に深く関与しているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の働きを抑えることで、片頭痛発作を予防するお薬です。
CGRPが作用する受容体をブロックすることで、片頭痛の発生を抑制します。
2026年4月に発売された、片頭痛予防治療薬の中で最も新しい薬剤です。
1日1回の内服で使用できるため継続しやすく、投与開始後比較的早期から効果が期待できることが特徴です。また、妊娠を希望される方にも比較的使用しやすい治療選択肢として注目されています。
3か月間使用した患者さまでは、
- 月間片頭痛日数が50%以上減少した方:56%
- 月間片頭痛日数が75%以上減少した方:34%
- 月間片頭痛日数が100%消失した方:18%
また、頭痛時に使用する急性期治療薬の使用日数も約半分に減少しており、投与開始後1週間程度から改善効果が認められる方もいます。
15歳以上の方から使用可能です。
*ナルティーク(Ⓡリメゲパント)口腔内崩壊錠
ナルティークは、片頭痛の発症に深く関与しているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の働きを抑えることで、片頭痛発作を改善するお薬です。
頭痛発作時としても、予防薬としても服用することもできる薬剤です。
2025年12月に発売された新しいタイプの片頭痛治療薬で、従来のトリプタン系薬剤とは異なる作用機序を持っています。血管収縮作用を有さないため、心血管系疾患などの理由でトリプタン系薬剤の使用が難しい患者さまにおいても使用を検討することができます。
*頭痛発作時として
主な効果(服用後2時間)
- 頭痛が完全に消える
- リメゲパント
- 約21%
- プラセボ
- 約11%
- 最もつらい症状(吐き気・光過敏など)が消える
- リメゲパント
- 約35%
- プラセボ
- 約27%
- 痛みの軽減
- リメゲパント
- 約56%
- プラセボ
- 約46%
いずれも統計的に有意な改善が確認されています。
*頭痛予防薬として
主な効果
- 月の片頭痛日数を減らす
- リメゲパント
- 平均 -4.3日
- プラセボ
- 平均 -3.5日
- 片頭痛日数が50%以上減った人の割合(レスポンダー率)
- リメゲパント
- 約49%
- プラセボ
- 約42%
統計的に有意な改善が確認されています。
2日に1回の服用となります。
15歳以上の方から使用可能です。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、締め付けられるような中等度の痛みが長時間続くタイプの頭痛です。身体的ストレス、精神的ストレスが誘因、増悪因子となります。中高齢者を中心として多くの方が経験されていると言われておりますが(生涯有病率30〜78%)、慢性緊張型頭痛は生活の質を大きく損ない、高度の障害を引き起こします。長時間の同一姿勢の保持や肩や首の筋緊張が頭痛の誘因になることがあります。このため適切に筋緊張をほぐしリラックスさせる運動療法などあります。治療薬剤については、鎮痛剤以外にも良質のエビデンスがある薬剤もあります。適切な治療薬剤の選択と生活指導などをきちんと行うことが緊張型頭痛のコントロールに大切です。
群発頭痛
目の奥をえぐられるような激しい痛みが1時間以上も続いてしまうタイプの頭痛です。あまりの痛さに耐えきれず、動き回ったり、転げ回ったりする人も少なくありません。しかも、数週間発作を繰り返すことも多く、頭痛の激しさから早期に治療介入し頭痛を軽減させる必要があります。群発頭痛は、三叉神経領域の痛みと副交感神経系の活性化に由来する自律神経症状により特徴づけられる疾患です。発作時に対する治療や、発作期の予防療法などエビデンスレベルの高い治療が行われるようになってきました。